ももの唇は温かい感触にふれていた。
理性は吹っ飛んでいて、こうなりゃ 誰に見られようがどうしようが、お構いなし。
そんな有頂天な気持ちになっていた。
悪魔のささやきの後、彼女は会場を見回して誰かを捜しているようだった。
会場の隅で打ち合わせをしたいるエイジュさんを見つけ、手招きで呼びつける。
気が付いたエイジュさんは軽く会釈をしながら、こちらに向かってくる。
ね この子 貸して
一瞬 困ったような顔をしたが、すぐに、
良いけど 明日にはちゃんと返してあげろよ。
ドモリが強い感じでそう言うなり ももの方を見て 
あまり はまるな よそう言って、ももからレンタカーの鍵を取り上げる。
こっちは気にしなくて良いから、もし時間合ったら 、向こうの店にいるからくるといいと、笑いながら去っていく。
ももの意志とは関係無しに話が決まる。
エイジュさんはゴールデン街に飲み屋を1軒持っていた。話には聞いていたが実際行ったことはなかった。
はい これ
下足札を渡された。
話が自分を通り越して決められて、少し不満を持ちながらも、先に玄関先に向かい、靴を取り出す。
#かかとがピンヒールでエナメルの光沢が艶めかしい  この時、気が付けば良かったんだ。
ももは足が24,5と幾分小さめなのだが、このハイヒールはももにはでかい大きさだ。
玄関先にあった公衆電話を使い、今日は打ち上げがあるから戻れないかも知れないと連絡を入れる。
外に出る
まだ 宵の口の世の中は大勢の人の波を作っている。
行き交う 男達の視線を浴びながら ちょっと良い気持ちになってくる。
ガード手前の交差点まで歩いてきて、おもむろにタクシーに乗り込む。
新宿税務署の手前まで
その言葉と同時にももはとろけた気持ちになっていく。
あの エイジュさんが言った あまり はまるな よという言葉の意味さえ気が付かぬまま
このあと ももは 多分に経験できないことを経験しようとしている。